第45回 神戸ファッションコンテスト2018

パリから留学レポート【2013年度受賞大久保さん】

シャンブルサンディカル留学中の大久保です。

こちらにきて10ヶ月、サンディカの3学年は残り1ヶ月となりました。

現在は学年の最終課題に取り組んでいます。

前回提出した課題を紹介します。

スポーツからインスピレーションを得るという課題で、私はアルピニズムを選び製作しました。A3のドシエ(ポートフォリオ)と、トワルでの1スタイル、集めた資料をどっさり入れた研究ファイルを提出します。サンディカでは、本生地で製作するのは最後のコレクションの1体のみです。その他は全てトワルでの提出なので、自ずと形だけで勝負できるものを作る傾向にあります。生地や色の勉強はあまりしません。私は生地や色などは会社で訓練してきたので何とかなりますが、その辺は少し学校としては割愛しているかなといった印象です。

生地に関しては、パリには生地屋がたくさんあり、コレクションブランドのプレタで使っていた見覚えのある生地の残反がたくさん売られています。ですから生地屋を回っていれば感覚的には生地の勉強はできます。

私がよく行く学校の近くの生地屋さん二件。良い生地で安めだけど激しくナンパしてくる生地、良い生地がたくさんあるけど高すぎて笑ってしまう生地屋

サンディカで推奨されるドシエ作りはかなり現実的です。もちろんクリエイティビティとかも必要ですが、何よりもドシエを通してコミュニケーションできているかが問われます。この課題では全ての点数で私の作品が学年で最高点だったので載せてみますが、みんなそれぞれのやり方でやっていて、点数はそんなに良くないけどセンスあるなあっていう人も結構います。日本人の細かい仕事が好きな先生が多いのか、日本人の評価はいつも高いので、そういう意味でやりやすい環境とも言えます。

サンディカのカリキュラムは間違いなく、洋服のデザインを趣味でなく仕事としてやっていくためのものです。自由にファッション観を育てられてきた日本人(特に私)は、たまにおもしろくないなぁと思ったりとか、タブーを破るのがファッションの良さじゃないのかな、とか思ったりします。でもこの教育方法は、パリの中心でファッション教育を続けてきた学校の持ち味なのかな、とも思います。質が高く、モダンで、王道。そういう服作りを目指せる学校の様な気がしています。私はこちらに来る前、日本の洋服の学校を卒業した後4年間アパレルで働いていた経験があります。会社に入ってから要求されることと、学校で学んだ事には実際ギャップが大きくあり、少し日本のファッション教育に疑問を持っています。そういう部分では私は教育機関としてこの学校はバランスがいいかなと思います。あと、サンディカの学生は本当にがんばる人はすごくがんばります。1学年70人くらいいて、デザインや立体裁断の授業は同じ曜日に同じ部屋で一斉に行なうので、同級生の中での自分のレベルも見えてきます。課題提出の前は人に負けたくないから寝ないで課題をこなします。人生の中に1年や2年、ディオールとか世界の王道ブランドを目指して友人と競い合う時間があってもいいかなと思っています。

 個人的に28歳でこちらに来て何か学べるのかなとも思っていましたが、先生や友達の言葉の一つ一つに発見があります。日本人との考え方の差などを理解する事は、グローバルな世の中で仕事をする上でとても大事だと思います。私は長い間日本で過ごしてしまったため、日本/海外の差がはっきりしてしまっているけれど、このコンテストを目指す人たちはもっとみんなフレッシュな感覚で海外に飛べると思います。クリエイションができる人は、自分のものさしがしっかりありすぎて、フランス人のアドバイスになじめない人もいます。来る事が決まった人は、是非柔らかい頭でこっちに来てほしいと思います。

そして、これからこのコンテストに挑戦する方たちへ。私はもうかなり前から日本のコンテストの善し悪しがわかりません。日本のファッション教育やコンテストに対して、何か変だなとか、現実味がないな、とか思っている方、負けないで自分のいいと思う方向を示してほしいです。そしてもう片方の目で、一番をとれる手段を、冷静に、客観的に考えて形にしていってほしいと思います。相手の潜在欲求を読む事はデザイナーの大事な仕事です。ぜひ審査員の先生方の琴線に触れる作品を作ってください。

—————————————————————————————-

大久保さんレポートありがとうござます!現地の様子など大久保さんの思いが伝わります!


PCサイトを見る

スマホサイトへ戻る