第45回 神戸ファッションコンテスト2018

パリからの留学レポート【2013年度受賞 大久保さん】

KFC2013で受賞し、今年の6月からフランスのサンディカ校(クチュール組合学校)へ留学している大久保美彩さんから留学生レポートをいただきました!サンディカからの夏休みの宿題や語学学校の雰囲気など、詳しく教えていただきました。

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サンディカ留学の大久保です。パリに来て1ヶ月半くらい経ちました。日本人のご夫婦が大家さんのお家で、3人のコロカテール(皆日本人で学生)と共に生活しています。

こちらに来て思った事を書きます。

留学して良かった事、

日本にいると、ヨーロッパやアメリカで起こる出来事はどうしても肌で感じられないので、どんなことがあっても自分の世界の外の話のようにしか感じられませんでした。ですがパリに来て、世界の中心(ヨーロッパやアメリカ)を近くに感じることができ、世界の中で生きていくためには?ということを実感として考えられるようになりました。自分が日本で心地よく生きていくことを想像した場合のデザイナーとしてのあり方と、こちらで想像した理想のデザイナーとしてのあり方はかなり違います。何を選択するにせよ、自分で納得して生きていくために他の国に住むことはとても大事だと思いました。

パリ、サンディカで良かった事、

正直今時パリに留学ってどうなんだろうとも思っていましたが、自分には合っていたように思います。フランスは個人主義で、結構マイペースに、自分のこだわりを持って生活している人が多い。でも、世界的にいろんなものや人が集まってくるところなので、世界との接点もある。歴史も大事にしているので、日本人が学ぶところは多いです。学校から先日送られてきた夏休みの宿題は、女性の体が解放された1910-30年代の歴史とデザイナーを調べてオリジナルに落とし込むような内容などでした。ちなみに去年はこの宿題はなかったそうです。

まだ学校には行っていないので理解は浅いですが、設備などはあまり整っていないようです。そして、クチュール的な授業はほとんどないそうです。ですが名前が知られている学校なので、スタージュの受け入れの可能性は高いそうです。

言葉について。

パリにある語学学校の中で良いとされる学校が3つあり、その中のひとつが、私の通うアリアンスフランセーズパリです。授業料も少し高めなので、わりと豊かそうな人たちが多いです。理解能力も結構高い人たちが多いです。クラスは15人くらいで、中国、ブラジル、エジプト、タイ、シリア、アメリカなど様々な国からほとんどが語学留学で来ています。そして、英語圏でないほとんどの人たちが英語を共通語として話せます。日本では英語を話せる事は特技になりますが、日本の外に出ると英語は必須です。日本でずっと生きていくと決めている人は日本語だけでいいかもしれませんが、自分がもし生まれた土地以外で生活したいと思ったときに生活拠点を自分で選べる。それが言葉の力だと思いました。フランスに住みたい方はフランス語ですが、フランス語は結構難しいです。英語はそれに比べるとかなり簡単なので習得されることをお薦めします。

フランスに来たい方は、日本で日仏かアテネに通われる事をお薦めします。多分、まっさらな状態でこちらに来るとかなり理解に努力が必要です。日本にいる間に、日本語でフランス語の文法と単語を少しでも多くやっておいた方が良いです。

日本との違い

日本の中流階級社会に比べて、フランスは移民も多いし貧しい人は貧しい。貴族は未だに貴族という肩書きを持っています。路上で生活する家族や物乞いの人たちもいます。車が路上で壊れて後から押している人たち、自分のつまみ食いを優先させるカフェ店員の愛嬌あるムッシュー、完璧でない様々なできごと。なにしろ皆生きてるんだなぁと実感することが多いです。むしろ日本の方が特殊で、きれいで歪みのない建築や、リカちゃん人形みたいな女の子達、プラスチックやモルタルで覆われた日本の情景は生きてる事も忘れてしまいがちです。こっちは建物も学校のプリントも歪んでるし、街はエイジングされているし(臭いし)、歳をとった女性のおしゃれがカラフルで美しい。そしてさすがガストロノミーの国フランス、食べ物がおいしい(高いけど)。綺麗に言うと、感情と感覚を大切に毎日を楽しんで生きています。そんな中、日本人は翻弄されたり、より大事な事に気付いたりするんだと思います。

まだ1ヶ月半くらいしかいないので、こんなところです。

この留学プログラムは結果的にかなりの出費を伴いますが、自分一人で行動を起こすよりはいろいろといい条件で留学できます。名前を呼ばれる瞬間まで将来が未確定で精神的に大変だと思いますが、ひとつの良いきっかけとして取り組まれると良いと思います。

自分たちの良いと信じる洋服とヴィジョンを作って、新たなタレントとして発掘されてください。

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入選者の皆様に向けて、とても有意義な情報とアツいメッセージをありがとうございます。現地のリアルな現状をレポートいただき、より留学生活を具体的に想像できたのではないでしょうか。
大久保さんが書いてくださっていましたが、どこの国へ留学する場合でも、語学ができるに越したことはありません。特に英語は母国語以外で話せる人口が多いので、いざというときの切り札として持っておくと、色々な場面で自分を助けてくれると思います。コミュニケーションができなければ、必然的にコミュニティーから離れていってしまいます。留学生活をより豊かで実りあるものにするためにも、語学の勉強はできる限りやっておくことをオススメします。最終審査会に向け制作に取り組んでおられる入選者の皆様は、毎日とてもお忙しくされているとは存じますが、一日10分、語学勉強に時間を取るだけでも、半年後にはかなり実力がついたことを実感できると思います。


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